ラジハ5話 Aiなど
コナンくんみたいな推理披露する会合ありましたけど、、、技師さんの仕事って多岐にわたるんですねえ(笑)
呼吸によるアーチファクト
アーチファクトというのは撮影に写り込んでしまったノイズというか、まあキレイな写真が撮れなかったということです。
・呼吸によって肺が膨らんで縮んで
・横隔膜が下がって上がって
・お腹は引っ込んで膨らんで
・腹部臓器も一緒に動いて
しまいます。
一瞬で撮影するレントゲン(単純X線)なら、けっこうきれいに撮れるんですが、
CTでは数秒
MRIでももうちょっと息止めをしなければなりません。
カメラと一緒ですね。ブレてしまうので。
他にも動きによるアーチファクトには、もちろん体動によるアーチファクトや、心臓の拍動によるアーチファクト、尿の動きによるものや脳脊髄液の動きによるものなどがあります。
Ai オートプシー・イメージング
お金が取れない!!!!!(よくお金の話をする)
(病院や条件によるかもしれませんが)
死亡しているためもちろん保険はきかないでしょうし・・
撮影するのも、読影するのも機材、人件費がかかっています。予約している他の患者さを待たせてしまうことも。
もちろん全員、必要なAiは撮影したほうがいいと考えていますが、明らかに取り巻く環境整備が追いついてません。
あと、Aiを読影するのは、
とんでもなく難しい
死後の変化について普段見慣れていないため、病気や外傷による変化なのか、
死後の正常の変化なのか、判断が難しいんです。
私はまだまだ勉強中です。
たとえば下のようなAiのCT画像のように、
大動脈の壁に赤で囲ったような血栓を思わせる、違う色の部分があったとします。
胸痛があった!突然死だ!と言われれば、
大動脈解離
(大動脈の壁が剥がれる、急死の原因のひとつ)をまず思いつくでしょう。
しかし、大動脈解離なら
こう見えることがおおいんですね。大動脈はアーチ(弓)を形作って上に行って、下に降りるので、剥がれた部分がつながっているためです。
死後の正常な反応として、血管の中の血液の流れが止まるので、血液が凝固(固まる)し出します。それが沈殿しても似たように見えることがあるため、注意が必要です。
このように死後に身体は経時的にどんどん変化していくので、Aiに精通していなければ死因を誤ってしまう可能性もあります。読影し慣れている人はかなり少ないと思われるため、この点は注意が必要と思いました。
肝損傷
肝臓に強い衝撃が加わると、肝臓が損傷します。
ぱっくり割れることもあります。
緊急手術を行う場合や、緊急IVR(カテーテルを用いて止血する)を行うことがあります。
高エネルギー外傷ではまあまあ見られます。
IVRは救急医や放射線科の診療の分野ですね。
ページング
五十嵐くんが、Aiを読影するときに、画像を「くる」のにマウスのコロコロのところ(ホイール)を高速でコロコロしていました!
このボタン、放射線科医がいちばん使うボタンです!(笑)
これが壊れているマウスがあると、、、放射線科医は戦意喪失します・・・
画像診断レポートの読み方!大公開!③
画像診断レポートがどれだけ一般向けの文書でないか、その専門性に気づいてきた方も多いかと思います。
→バックナンバー https://radiologist-rads.hatenablog.com/entry/2019/04/20/173959
今回は、ほぼ気にしなくていいはずの病変(良性)について、レポートに描写された場合を紹介していきます。
なぜ気にしなくていいものをわざわざレポートに書くのか! ややこしくなるだけ!けしからん!
と思う人もいるかも知れませんが、見えてしまったら報告しちゃうでしょ?というのは半分本当、半分冗談で、「本当に完全な正常とはいえない」モノは、場合によっては症状の原因になることがあったり、ごく稀に悪性腫瘍が発生したり、主治医の先生がレポートを見たときに、かすかなヒントになることがあるかもしれないモノなんです。
前回も申し上げましたが、画像診断医は実際に患者さんを前にしていないので、画像で得られた所見の重み付けが難しいんですね。その所見が要るものなのか要らないものなのかは、主治医の先生が決める。そういうことで、つまり実際には要らないことをいっぱい書いてしまっています(その善悪は今回は議論しません)。
それでは具体的に見ていきましょう。
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【胸腹部単純CT】
肺:両側肺尖部に石灰化を伴う小結節影や索状影を認めます。陳旧性結核などの炎症後変化を疑います。
右S9に索状影を認めます。炎症後変化や部分無気肺を疑います。
左胸膜に石灰化あり。
甲状腺右葉にLDAを認めます。要すれば超音波検査で精査ください。
冠動脈壁に石灰化を認めます。
胸水を認めません。
右肩甲骨背側に径2cmの脂肪性腫瘤を認め、脂肪腫を疑います。
左第6、7肋骨に変形と骨硬化像を認め、骨折後変化を疑います。
肝:S4辺縁にLDAを認めます。分布からはthird inflowによる限局性脂肪肝を疑います。
胆:底部に限局性の軽度壁肥厚を認め、内部にはRASを疑う小嚢胞を認めます。胆囊腺筋腫症を疑います。胆泥あり。
膵:主膵管の軽度拡張を認めますが、明らかな閉塞機転は認めません。
脾:LDAを認めますが、嚢胞や血管腫、過誤腫などの良性病変の可能性が高いです。
腎:両側腎にLDAを複数認めます。嚢胞を疑いますが、一部はやや高吸収を示し、嚢胞と断定できません。超音波検査でも確認ください。
副腎腫大なし。
少量腹水あり。
リンパ節腫大を認めません。
骨に異常を認めません。
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うわ〜〜
もはや患者さんが一見して理解できるレベルは明らかに超えており、
主治医でも専門分野でない部分については難解かもしれません。
読むのも大変ですね。
このレポートはほぼ問題ないことが90%以上と思います。
何かが見つかったときに、それが、完全に良性の所見かというのを判断することは実はかなり難しい。10年前にもCTを撮っていて、変化がなければ、それはかなり良性の可能性が高いですが、ワンポイント(初めてのCT)では超初期の癌(悪性)と見分けが付かないことも多いということなんですね。
不安を煽りたいわけではないです!
これから偶然みつかるような良性病変について解説していきますので、上のレポートを見ても安心できるようになって欲しいと思います。
ラジハ4話 若年女性の気胸
自然気胸というのは、勝手に?いつのまに?気胸になった場合に言われますが、
ふつう、
若い
細い
男性
に多いんですね。皆さんの まわりにも居てるんじゃないでしょうか??
今回は若年「女性」でしたね。
珍しいんですよ。なんでかは知らないですが。男性に多いんです。
そういうことなので、女性で気胸をみたら、もしかしたら普通の気胸ではなく、他に異常があるのでは??と考えることができます。実際には普通の気胸のほうが多いとは思いますが。
よく言われる原因は2つあり、
①胸腔の子宮内膜症
②LAM リンパ脈管筋腫症
というものがあります。
①子宮内膜症とは、子宮内膜という、月経のたびに流される、赤ちゃんが育つためのベッドのようなものですが、
子宮は卵管という、卵子が通る道を介して、腹腔内(お腹の中)とつながっています。
そのせいか、子宮の内膜組織が、腹腔内に種蒔きのように飛んでしまうことがあり、これを子宮内膜症といいます。
実際にはいろんな説があるわけですが、この子宮内膜組織が、腹水(お腹の中の少量の水)の流れに乗って、上の方まで流れて、
偶然 横隔膜(胸と腹を分けている)に穴が空いている人(結構います)の場合は、胸の中まで子宮内膜組織が遠足してしまいます。
この子宮内膜組織ですが、月経のときには、子宮の内膜と同じように、月経が起こってしまうので、剥がれて血が出ます・・・
もし肺にくっついてしまっていた場合は、月経にあわせて肺に穴が空き、気胸になってしまうということなんです。
②LAM
これは珍しい病気で、肺がスカスカになってしまう体質の人で、穴が空きやすいのです。いずれ肺が使えなくなることがあるので、移植などの手段を考えないといけません。
鑑別はあげればもっとあがりますが・・・肺に嚢胞ができる病気(LAMの他に、Birt-Hogg-Dube症候群、間質性肺炎や、ニューモシスチス肺炎などきりがない)
ラジハ4話 撮影範囲
撮影範囲
画像一般に言えることなんですが、
肩を撮影したい、そう思っても肩だけ撮影することはできません。
なぜなら、肩を撮影しようと思うと、当然ながら
腕は撮影されるし、
皮膚、筋肉は撮影されるし、
肺や肋骨も一部撮影範囲に入ってしまいます。
肩に異常があると思って撮影された画像の端っこに、異常が写っていることは当然ありえます。
肩と関係あるかどうかはさておき、一定確率で、偶然にも異常が写ります。
幸運なこととも言えますが・・・
肩の痛みと関係のある所見なら、なおさら幸運ですが、
問題があります。
そう、気づかない!!!!
肩に異常があるとばっかり思って画像を見ているので、そうそう気づきません。
あとは、肩の専門家、肺の専門家、というふうに、医者は基本的には分業体制なので、もしかしたら不得意分野のことは難しいこともあるかもしれません。。
放射線科医は、画像の撮影の目的に関係なく、隅々まで見るように訓練されているので、いわば、セイフティネットのようなものですね。
でも本当に難しいんです。
今回のように、気胸や、
まれですが、偶然に肺癌が写ってしまうこともあるので、
撮影した画像は、基本的には隅々まで確認してほしいですね。(医師向けのメッセージですが)
よくある偶発所見としては、
・肋骨骨折を撮影して肺癌みつかる
・お腹のCT撮って肺癌みつかる
・胸のCT撮って腎臓に癌がみつかる
・首の造影CTを撮って頭の動脈瘤や慢性硬膜下血腫がみつかる
・股関節の撮影で子宮や卵巣の異常
・頭の撮影で眼の異常
ラジハ3話 超音波 (エコー )検査
五十嵐くんはエコーも自分でやっちゃいます!!
放射線技師はふつうエコーはやりませんねえ?ですよね?
でも放射線診断医はエコー使いますね。最近は検査技師がやることが多いですが、医師にとっても、簡便で無侵襲(検査をすることでダメージがない)な検査なので重宝されます。
超音波(エコー)検査は、
その名の通り、超音波を当てて、その跳ね返りを捉え、画像として解釈する検査です。説明が難しいですが、イルカが超音波を出して、海の中の物に当たって跳ね返ってくるのをキャッチすることで、視界を得ているようなイメージですかね。
プローべと呼ばれる、当てる部分から超音波が出て、キャッチして、という機械なんです。
エコーの得意分野は、体表から近いところで空気がないところの検査です。
エコーの機械はめちゃ高額です。しかも雑に扱うと壊れて。。。100万単位で飛びます。
超音波検査は、空気に対して非常に弱いので、患者さんの皮膚との間を隙間なく密着させないとダメ。そのためにゼリーを使います。このヌルヌルが少し気持ち悪いですが、痛くないですし無毒ですし拭いたら綺麗に取れます。
エコー検査は検査する人が、手にプローべをもって、直接あてて、検査を行うため、検査をする人の熟練度によって結果が変わってしまいます。難しいんです。
あとは、簡便な検査で素晴らしいのですが、なんせ画像がそんなに綺麗じゃないので、エコーはあんまり細かいことは苦手です。今回のように小さい乳癌などはなかなか みつからないかもしれないですね。でも最近は機械もかなりよくなっています。
救急の現場や、肝臓など消化器内科、また産婦人科の領域ではよく使われています。
造影MRI
一般的な検査の中ではこれがいちばん高額なのではないでしょうか!?(すぐお金の話をする)。。いやPET–CTの方が高いか。
最終兵器ですね。
乳癌の存在診断よりは、広がりの診断に用いられることが多いとおもいます。つまり、「乳癌ありますか?」っではなく、「乳癌見つかったので、どこまで切除したらいいのか範囲を調べます」ということですね。
あと、けっこう読影の難易度が高いです。典型的でない乳癌や、乳癌に似た良性病変の鑑別(見分けること)が難しい。造影剤の分布の仕方を時間軸で解析して、病変の質的診断(良性か悪性か など)を行います。
造影MRIでは、ガドリニウムGdという金属の入った造影剤を用いており、頻度はかなり低いですが、造影剤アレルギーも存在します。アレルギーの頻度は造影CTほどではありません。とはいえ、絶対安全とは言えないので、適応 (検査をしてもいいか )には十分な理由が必要です。
ーーーーー造影剤アレルギー → https://radiologist-rads.hatenablog.com/entry/2019/04/08/220825
ちなみに、腎機能が悪い (eGFR< 30 )場合は、ガドリニウムが脳に沈着したり 、腎性全身性線維症 (皮膚が痛い、かゆい、硬くなる。治療法は不明 )を発症することがあり、禁忌です (使ったらダメ )。
ラジハ3話 デンスブレスト
五十嵐くん有能すぎぃ!
たしかに彼が職場に居たら、助かる気持ちもありますが、修行中の放射線科医(いやベテランもか)は爆死します笑
①デンスブレスト dense breast
まず、乳癌は日本でも最近どんどん増えています。
欧米ではとくに多く、食文化?体格?のせいなんでしょうか。とにかく多いというのと、
やはり欧米は、女性の権利や生活に対しての意識が早くから成熟していたために、かなり力を入れて乳癌に取り組んできたようです。
そのため検診の体制や、その方法なども欧米が軸になって作られてきました。(まあなんでもだいたいそうなんですけど)
ご存知のとおり、日本人は欧米人とは体格などが遺伝的に異なる部分が多く、
従って、欧米の基準が全て当てはまるわけでは到底ありません。これは乳癌だけでなく、さまざまな分野で違いがわかっています。(教科書には欧米人、とくにユダヤ人に多い病気などがよく載っています。むかしからよく研究されていることも理由でしょうが。cystic fibrosisやNiemann Pick病などは日本ではかなり珍しい病気ですが必ず教科書に出てきます)
脱線しましたが、マンモグラフィはもちろんスタンダードではありますが、日本人女性には適さない場合があるということなんですね。
これはマンモグラフィの教科書の最初の方に書いてあります。
乳腺組織にはその密度によって
・脂肪性
・乳腺散在
・不均一高濃度
・(極めて)高濃度
というふうに分類され、後者2つが、デンスブレスト(高濃度乳腺、高濃度乳房)と言われます。
普段読影していると、「不均一高濃度」がなんと多いことか。
デンスブレストの乳腺ではマンモグラフィーで 癌が正常の乳腺に隠れてしまい、指摘できないことがあります。
そうでなくても、X線を透過させて作った投影像なので、完全な診断は容易ではなく、
触診やエコー検査(超音波で内部を観察する)などと合わせて診断していきます。
画像診断全般に言えることですが、
①画像で何かが写った→何かはある可能性が高い
②画像検査で見つからない→画像で見えないだけ、のことは まあまああります。
存在診断(あるか ないか)においては、
①特異度は高い(画像であれば実際にある)
②感度は低い(画像で見えなくても実際にはあるかも)
ということですね。
こうして検査の解釈というのは慎重に行われるのです。
画像診断レポートの読み方!大公開!②
前回では、画像診断レポートは、患者さんではなく主治医に向けた文書である
ということについて確認してみました。
画像診断レポートの具体的な例を見ながら、読み方を考えていきましょう。
ーーーーーーー レポートの一例 ーーーーーーーー
【腹部単純CT】
(所見)
肝:SOLを認めません。
胆:n.p.
膵:n.p.
脾:n.p.
腎:n.p.
副腎:n.p.
リンパ節腫大を認めません。
腹水を認めません。
(診断)
W.N.L
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
はい、到底 患者さん自身に読んでもらうことを目的としていないことが分かるかと思います。
ちなみに、この所見は全く異常が見当たらないという意味のレポートです。
ーーーーーーーーーーーーーーー
【腹部単純CT】
→造影剤という薬の使用の有無。単純CTっていうのは造影剤を使わない、ということ。
(所見)→画像でみつかったものを描写する欄。
ここから臓器別に異常の有無を書いていきます。
肝:SOLを認めません。
→space occupying lesion:占拠性病変。肝臓内に異常な腫瘤がない、という意味。
読影レポートでは「あり&なし」より「認める&認めない」を多用します。《画像に100%はない》せいでもありますが、画像だけでは診断できないことも多いので100%あります!とは書かないのです。あとは、「〇〇がない」と書いてしまうと画像に写らなかっただけの、実際にはあるかもしれない病変のことを誤解させてしまう恐れがあります。(例えば、胸水や腹水などは、生理学的にはほぼ必ずあるはずなので、画像で見えないだけで、無いわけではない。他にも、腫瘤になる前の細胞レベルの癌は画像には写らない。ただし結構適当な気がする)
胆:n.p. → nothing in particular / nothing particularly: 特に何もない、という意味。
胆は胆嚢のこと。
リンパ節腫大を認めません。→ リンパ節というのは全身のリンパの流れの中継地みたいなものなのですが、炎症や、腫瘍などがあると腫大してきます。細長い球;ラグビーボール型なのですが、だいたいで言えば、短径10mmを超えると異常なことがあります。
(診断)W.N.L →within normal limit :正常範囲内、という意味
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全く正常でも理解に苦労するかもしれません。異常があれば尚更ですね・・・
次回は、異常がある場合の、よくある文言を紹介したいと思います。