radsのカンタン!放射線診断ブログ

放射線診断、画像診断の医療画像(CTやMRIなど)についてカンタンに紹介したいと思います。

画像診断レポートの読み方!大公開!①

画像診断レポート 〜 何が書いてあるの?

昨今、CTやMRIなどを撮影したあとに、「画像診断レポート」を直接 手渡される患者さんが増えてるのではないでしょうか?

「肝SOLを認めません」

「左腎にLDAあり」

「限局性すりガラス影を認め、AISを疑います。経過観察してください。」

「食道壁肥厚を認めるため、要すれば内視鏡検査を行ってください」

などと、やたら訳の分からない文言が並んでいるのが特徴です(笑)

 

医療画像や、その診断レポートも、患者個人に属するという考え方を根拠とする方針だと思います。

しかしながら、問題なのは、

 

画像診断レポートは、放射線診断の読影医 → 患者さん」ではなく読影医 → 主治医」に向けた文書なのです!

これは本当に勘違いしてはいけないところです。

というのも、放射線診断医=画像診断医=読影医は、患者さん本人の診察や診療を直接行なっていないため、最終的な病気の診断自体はふつう下しません。(明らかなものはもちろん診断しますが)

 

「画像に100%はない」(格言)ことも理由ですが、

病気というのはそもそも、症状や既往歴(過去の病歴)などから考えて、画像診断と合わせて「最終的に診断する」のです。読影医は、主治医に診断のヒントとなるであろう所見(画像で見えたもの、解釈)を伝えて、最終診断を手伝います。

 

少し具体的な例を挙げると、

「胆石があって胆嚢が腫れているように見えて、炎症もありそう。」と思っても、「腹痛が全くない」となると、それは本当に胆嚢炎なのか?と再考しないといけない。読影医は直接診察していないので、画像にうつった特徴しかわからず、腹痛がどんなものなのか詳しくは知らないため、「胆嚢炎です!!」とはレポートには書かず、「胆嚢炎の可能性がある/胆嚢炎うたがい」となるわけです。

 

まず画像診断レポートを理解するためには、このような背景を理解していなければなりません。

 

つまり、画像診断レポートを受け取っても、その解釈には高度な医学的知識が必要なので、決してそのまま鵜呑みにしてはいけません!!

 

追って具体的な読み方についても解説していきたいと思います。

実は医師でもCTは読めない!?

一般の方や、学生ならともかく、

医師でもよくわかっていない人がみられるので(理由は後述します)

お節介ですが、カンタンなことから解説していきたいと思います。

 

 

  • CT :
  • computed tomography
  • こんぴゅーてぃっど ともぐらふぃ

とは、放射線であるX線を用いて、身体の断面図を作る機械です。

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ドーナツ🍩の中に寝るかんじですね。

 

できた画像は白黒のグレースケールで表現されています。

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(医師国家試験109回 A41より引用)

お腹のCTはこんなかんじです。

黒〜グレー〜白で表現されています。

 

学生に講義するときは、

何が何色なのか

「臓器の輪郭を指でなぞれるか(境界がわかるか)」

と聞いて、本当に基本的なことから教えています。意外とこんなカンタンなことは逆に教えられていないことも。

 

ちゃんと分かっている人はほぼいません。なんで?と思いますが、私もわかってなかったなあ…

 

CTの見え方については別の記事を参照ください。→CTの色、見え方、覚え方 https://radiologist-rads.hatenablog.com/entry/2019/04/17/164205

 

 

  • なんでCTの画像が読めないのか

1 難しい?のでテストには明らかな異常しか出ない。なんなら画像を見なくても文章で答えが予想できるほど。

2「画像に100%はない」格言です。正しさが見えにくく、やはり教育しにくい。

3 実際に教科書に出るような画像が見れることは少ない。教科書は、ほんとうに綺麗に撮れた写真が載っているかんじですかね。

4 教えてくれる人がいない。正解がわからないので教えられない。放射線診断医は非常に少ない。5000人程度しかいないんです!ちなみに医師は30万人くらいです。

 

で、わかってないにも関わらず、

実際の臨床現場では、検査の中で言えば、やはり画像ほど情報量の多い検査は存在しないでしょう。

つまり、診断のカギとなることが多いわけです。

 

・問診して、診察。ここまででは できることは100年前とそう変わりません。

・採血。血液検査で詳しい診断にたどり着ける病気はかなり限られています。考えてみれば、血液を採取して分析しているだけなので、身体の中の病気から何か物質が出たり、病気に身体が反応したりといった、間接的な証拠を集めているに過ぎないわけです。

 

例をあげれば

「お腹が痛い」;

いつからどんな痛さか。

食べたものは?

手術したことある?

過去の病歴は?

 

触診してみる;

押したら右腹部が痛いらしい。

 

→右腹部にある臓器はいっぱいあります:

肝臓、胆嚢、上行結腸、盲腸(虫垂)、右腎臓、尿管。他にも膵臓や小腸… 

どれが原因か、意外とわからないんです。もちろん絞ることはできますよ!しかし臨床推論は確率論的な手法なので珍しい疾患には弱い。あとは想定していない病態にはたどり着けません。

 

そこで近年、CTの普及によって、CTに頼って診療を行うことが増えてきました。その良し悪しの議論はほかに譲ります。

 

で、CTを撮影するわけなんですが、

ここで問題が戻ってきます。

 

CTせっかく撮ったのに、読めないんです。。。

(もちろん放射線科でなくともしっかり読影できるドクターもいらっしゃいます。でもそれは責任感があり、ちゃんと勉強されている少数派だと思います)

 

まあそのために放射線診断医が居るわけですが、明らかに数が足りていないので、世の中には、放射線診断医が目を通していない画像検査が山ほどあります。

日本には海外に比べて明らかに優秀な放射線技師が多いので、技師さんが画像の解釈も手伝ってくれて、なんとかなっているという病院も多いかもしれません。(実は日本の非読影医も海外の非読影医よりは読影できるのではないでしょうか)

 

 

不安を煽るために記事を書いているわけではないですが、現状の理解は大切です。

この現状は、お察しのとおり、危険な状況とも取れますので、

だれでもなんとか最低限は読影できるように、今後、基本のポイントを発信していきたいと思っています。

 

 

 

………

  • ちなみに最近、読影室(ラジエーションハウス、と言っているのは聞いたことがない 笑)であった会話です。

読影室には、画像の解釈について、よく他の科の医師がコンサルテーション(相談)にやってきます。

 

バリバリ活躍中の中堅消化器内科医「(CT画像を一緒に見ながら)この患者さん、腹痛なんですけど、、、膵炎はないですよね?」

放射線診断医「・・・いや、膵炎は、ありますね(苦笑)」

 

・・・

消化器外科医「腹痛、嘔吐なんですけど、大丈夫そうですかね?」

放射線診断医「いや、軽微な所見ですが、ここで腸管が破れてるんで、これからオペですかね。(画像を示す)」

消化器外科医「うわ、ほんとですね!」

 

・・・

ベテラン消化器内科医「エコー(超音波の画像検査)してみて胆嚢炎だと思ったんですが、CTでも胆嚢炎で合ってますよね?」

放射線診断医「うーん、その可能性はもちろんあるんですけれど、おそらく胆嚢の隣にある肝臓に膿瘍(感染している病変)があって、炎症が胆嚢にも波及しているように見えます。」

消化器内科医「そうなんですか。。。では、いったん胆嚢摘出手術は中止して、抗生剤で様子を見てみます。必要そうならまた ドレナージ (管を入れて膿瘍を体外に排出させる )の相談させてください」

 

・・・こんなかんじで仕事しています。ちゃんとした急性期病院に勤めていても、こんなのアルアルです。せっかく撮影したんだから、やっぱりもうちょっとだけCT読めるようになって欲しい。真夜中だったら1人で判断しないといけないわけだし。お節介を続けていきます。

 

 

 

 

ラジハ2話③骨肉腫

③骨肉腫

MRI、まあ今日撮る必要はまったくないですね・・(笑)

そんなめちゃくちゃ急ぐわけではないですね・・・早くしたい気持ちはあるけど。

 

困ったことに若い人に多いんです。

一番多いのは膝で、脛骨という、膝の下の骨です。

 

骨は

1.骨端、2.骨幹端、3.骨幹

というふうに端っこから名前がついています。

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2.骨幹端

の部分は、骨を作って、骨を伸ばしていきます。

増える能力がある細胞というのは、裏を返せば、がんのリスクがあるということでもあります。がんというのは、無尽蔵に細胞が増えてしまっている状態なのですから。

 

やはりMRIがいちばんわかりやすく、

ドラマでも撮っていたT1強調像やT2強調像以外にも、さまざまなシークエンスを用いて検査します。

ラジハ2話①レントゲン ②リフラウメニ

ラジエーションハウス2話!

面白くなってきました!

 

今回も解説していきたいと思います!

 

それにしても子供としゃべるときの五十嵐さん、たどたどしくなく、かなり饒舌(笑)

① レントゲン = 単純X線

X線を当てて、フィルム(今は電子的ですが)を現像する、いわゆるレントゲン写真ですが、

健診では胸部、

怪我をしたらその部位の写真を撮る。近くの診療所でもできる比較的カンタンな検査ですね。

 

一般に、X線を発見した、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(Wilhelm Conrad Röntgen)博士の名をとって、「レントゲン写真」と言いがちですが、

院内では「単純X線」や「一般撮影」などと呼ばれています。

 

X線は身体を貫通するんですが、身体を通って出てくるときに、、その通り道によって、弱まるんですね。

基本的には、密度が小さいもの(空気など)の中は通りやすく、

密度が高いもの(骨や金属など)の中は通りにくいため、

ほぼ空気である肺や、ほぼカルシウムである骨がよく見えます。

 

 

ですがCTやMRIが台頭していることからもお察しのとおり、

単純X線でわかることは非常に限られていると言っていいでしょう。

そう、腹部単純X線(お腹のレントゲン写真)を撮影しても、副腎皮質癌(腎臓の隣りにある副腎にできる癌)も、膵尾部腫瘤(膵臓の尾っぽのところにできたできもの)もどちらもみえません。

 

膝に骨肉腫があっても、とてもわかりにくいこともありますし、撮影の方向によっては骨折も見えないこともよくあります。実は。

でもいちばんカンタンに検査できる画像検査のひとつなので、ひとまず撮影してみる価値はあります!

 

 

②Li-Fraumeni(リ-フラウメニ)症候群

遺伝的に家族性に、しかも若くして「がん」ができてします。

肉腫、乳がん、脳腫瘍、白血病、副腎皮質癌などですが、とくに肉腫や副腎皮質癌など珍しい腫瘍が家族性に発生している場合は疑いやすい症候群です。ただ、非常に非常に稀です!今回のドラマではカルテに「副腎皮質癌の既往、家族に白血病」とあったので、クイズ的には「Li-Fraumeni!」と叫んだ放射線科医がいたことでしょう。。

生物学の勉強をされている人なら、p53という遺伝子をご存知でしょう(がんを抑制する遺伝子)。これが異常になると、がんができてしまう、という機序ですね。

ひとつ腫瘍を治療したとしても、そもそも腫瘍ができやすい体質なため、今後、他の腫瘍ができてしまう可能性が十分にあります。

 

アンジェリーナ・ジョリーはBRCAという乳がん卵巣がんができやすい遺伝子変異があったため乳房を予防的に切除しましたが、Li-Fraumeni症候群でも、予防的に乳房切除をすることがあるようです。

 

こういう珍しい病気は、既往歴(過去になんの病気をしたのか)をきちんと伝えないと、ヒントがないため診断にたどり着くことは困難です。

 

 

ラジエーションハウス1話の ないないエピソード

ドラマは面白かった!

それとは全く関係なく、わかりやすくするとか面白くするために描かれている部分もあると思いますので、

 

ちょっと実際のところを紹介してみたいと思います!

 

見たことないor

たぶん?無いと思うこと!

 

 

●ラジエーションハウス

と呼ばない(笑)

このマンガ読むまで初耳だったんですけどね…

ふつうに読影室と言います笑

そう言うところもあるんでしょうか…カッコいいな…

 

●仲違い?

放射線技師と放射線科医は、お互いに尊敬しています!技師には機器の知識など、特殊な技能があるため、医師はありがたくお世話になってます。技師も医師も互いに教え合うことが多いので仲良しですけどね?少なくとも周りでは(笑)

 

●動脈血流、弱くない?

血管造影検査のとき、右の股のところ (右大腿動脈 )を穿刺 (針で刺す )するわけですが、

劇中では血管内に入れたチューブのような筒 (外筒という )から、

たらーり

と血が出てきていました。

 

実際は、

どばぁーぁああ!ぴゅーーっ!

ってめっちゃ血が出ます。

だって動脈ですもん。

 

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このスプーン🥄が血とすればこんなかんじで、股の動脈から血が出てくる

 

 

読影件数200件

2人ではかなり厳しいかと…

あんちゃん優秀すぎ…

あとその年齢ならまだ専門医ではないのでトレーニング中のはずで、トレーニングするには研修指定の病院である必要があるため、あまかす病院はそれを満たしているのか 少しだけ心配です(笑)

というのも、放射線診断医のトレーニングのためには、卒後の初期研修2年 (スーパーローテート )が終わってから、

5年もの後期研修医 (レジデント )である期間があります。長いんです。厳密にはその次の年に試験が受けられます。

 

つまり最短でも32歳くらいじゃないと放射線診断専門医ではないということです。

で、トレーニングのためには、レジデントが読影した画像を、指導医がチェックしないといけないので、

部長、200件読んでるんですか。。。

 

ちなみにCT、MRIなど、大量の画像を取得する検査を、30件も読影すると、疲れます(笑)

読影クオリティも下がると言われています!

 

放射線技師、病室いきすぎ?

 

●カンファレンスで、放射線科医が、転院などの裁量を持つことはほぼない

 

診断や治療プランを提示することはあれど、日本では、あくまで主治医がだいたい決めますね。

 

●あんなに可愛い顔では読影できない(笑)

…さすがです。

 

 

 

ラジエーションハウス1話③ウエステルマン肺吸虫

 

ほんで、

③ウエステルマン肺吸虫

いやいやいやいやいやいや!

めっちゃ珍しいやん!

 

海外で淡水のカニを生食したと知ればまだ診断できるかもしれませんが、国内ではなかなかお目にかかれるものではありません。

川行ってサワガニ、絶対食べてはダメです。

日本でも他の寄生虫がいます。

 

 

名前に肺と書いてある通り、基本的には肺 (胸腔 )に多いですが、たまに脳に巣食って、命にかかわります。

 

しかし頭の中に何かある、ということはわかっても、普通なら、画像を見てもまずglioblastoma などといった脳腫瘍 (できもの)や脳膿瘍 (ばいきん)などを疑うところかもしれませんね。やっぱ主人公天才!

 

寄生虫なら薬で治せますもんね。

 

画像は、他の検査と同じく、病気を発見したり、診断を絞る (鑑別する)ことには便利です。

が、画像だけで診断できる病気は意外と少ないので、しっかり問診することが大切ですね!

 

ラジエーションハウス1話②造影剤アレルギー

続きまして、

 

②造影剤アレルギー

ってなに!?

 

劇中で、『造影剤を使います!』『アレルギーがあるんだ!』『うちの評判を落とすことになるところだった』

 

などと大げさに言われる造影剤アレルギーですが、

実はほんとに割と大げさな問題なんです!!!

 

●まず造影剤というのは、

血管の中に、画像によく写る薬剤を入れることで、『血管 (など )がよく見える!』というものです。

身体にX線 (放射線 )を通して作られた画像である単純X線 (いわゆるレントゲン )や、CTでは、

ざっくり言えば、密度が濃いものが白、薄いものが黒く写ります。

骨は重いから白、空気は軽いから黒

そんなかんじです。 (本当はそれだけではないが )

 

つまり身体を写しても、軽い順に、

空気、脂肪 (油は水に浮く )、水、肉、骨

この5種類が見分けられる程度です。

 

つまり血管はあんまりちゃんとみえない!

劇中では、脳動脈瘤が切迫破裂 (破裂しそう )になっていると思われているので、血管をみたいのですね。

 

●そこで、造影剤を血管に入れる!

と、血管が写るので、血管の形がわかるんです! (血管の内側にある造影剤が見えるだけ )

 

動脈瘤は破裂すると1/3死亡、1/3後遺症、1/3回復などと言われている重病です。

 

破裂してるとか、瘤の形とか調べたい。

次の治療のために!

 

●造影剤アレルギー

造影剤はヨード (ヨウ素 )を含むドロドロの液体で100mlくらいを急速に静脈内に投入することになります。 (CTの場合 )

 

人は、 そば やラテックス、薬など、何にでもアレルギーが出る可能性がありますが、

もちろん造影剤にもアレルギーが出ることがあります。

 (アレルギーではなくヨード自体の毒性という機序もあり、詳しくはまだわかっていないこともあるのですが 。ちなみにそれはphysiologic reactionといいます)

 

●造影剤アレルギーでは、だいたい1/40万人で死んでしまいます!!

数万人に1人は入院するほどの副作用が出ます。

喘息があると10倍出やすい。また、過去に酷い造影剤アレルギーがある人は繰り返しやすいようです。

 

つまり、造影剤アレルギーがある人に、造影剤を使うのはふつう躊躇します。必要な場合はもちろん使わざるを得ないこともありますが。

 

治療で人が亡くなる場合は「まだ」納得できるかもしれませんが、

なかなか検査だけで死亡となると納得いかない人も多いのではないかと思いますね。

びっくりですし、かなり辛いと思います。

 

劇中でも使わずに済んでよかったな〜とホッとしました。