実は医師でもCTは読めない!?
一般の方や、学生ならともかく、
医師でもよくわかっていない人がみられるので(理由は後述します)
お節介ですが、カンタンなことから解説していきたいと思います。
- CT :
- computed tomography
- こんぴゅーてぃっど ともぐらふぃ
とは、放射線であるX線を用いて、身体の断面図を作る機械です。
ドーナツ🍩の中に寝るかんじですね。
できた画像は白黒のグレースケールで表現されています。
(医師国家試験109回 A41より引用)
お腹のCTはこんなかんじです。
黒〜グレー〜白で表現されています。
学生に講義するときは、
「何が何色なのか」
「臓器の輪郭を指でなぞれるか(境界がわかるか)」
と聞いて、本当に基本的なことから教えています。意外とこんなカンタンなことは逆に教えられていないことも。
ちゃんと分かっている人はほぼいません。なんで?と思いますが、私もわかってなかったなあ…
CTの見え方については別の記事を参照ください。→CTの色、見え方、覚え方 https://radiologist-rads.hatenablog.com/entry/2019/04/17/164205
- なんでCTの画像が読めないのか
1 難しい?のでテストには明らかな異常しか出ない。なんなら画像を見なくても文章で答えが予想できるほど。
2「画像に100%はない」格言です。正しさが見えにくく、やはり教育しにくい。
3 実際に教科書に出るような画像が見れることは少ない。教科書は、ほんとうに綺麗に撮れた写真が載っているかんじですかね。
4 教えてくれる人がいない。正解がわからないので教えられない。放射線診断医は非常に少ない。5000人程度しかいないんです!ちなみに医師は30万人くらいです。
で、わかってないにも関わらず、
実際の臨床現場では、検査の中で言えば、やはり画像ほど情報量の多い検査は存在しないでしょう。
つまり、診断のカギとなることが多いわけです。
・問診して、診察。ここまででは できることは100年前とそう変わりません。
・採血。血液検査で詳しい診断にたどり着ける病気はかなり限られています。考えてみれば、血液を採取して分析しているだけなので、身体の中の病気から何か物質が出たり、病気に身体が反応したりといった、間接的な証拠を集めているに過ぎないわけです。
例をあげれば
「お腹が痛い」;
いつからどんな痛さか。
食べたものは?
手術したことある?
過去の病歴は?
触診してみる;
押したら右腹部が痛いらしい。
→右腹部にある臓器はいっぱいあります:
肝臓、胆嚢、上行結腸、盲腸(虫垂)、右腎臓、尿管。他にも膵臓や小腸…
どれが原因か、意外とわからないんです。もちろん絞ることはできますよ!しかし臨床推論は確率論的な手法なので珍しい疾患には弱い。あとは想定していない病態にはたどり着けません。
そこで近年、CTの普及によって、CTに頼って診療を行うことが増えてきました。その良し悪しの議論はほかに譲ります。
で、CTを撮影するわけなんですが、
ここで問題が戻ってきます。
CTせっかく撮ったのに、読めないんです。。。
(もちろん放射線科でなくともしっかり読影できるドクターもいらっしゃいます。でもそれは責任感があり、ちゃんと勉強されている少数派だと思います)
まあそのために放射線診断医が居るわけですが、明らかに数が足りていないので、世の中には、放射線診断医が目を通していない画像検査が山ほどあります。
日本には海外に比べて明らかに優秀な放射線技師が多いので、技師さんが画像の解釈も手伝ってくれて、なんとかなっているという病院も多いかもしれません。(実は日本の非読影医も海外の非読影医よりは読影できるのではないでしょうか)
不安を煽るために記事を書いているわけではないですが、現状の理解は大切です。
この現状は、お察しのとおり、危険な状況とも取れますので、
だれでもなんとか最低限は読影できるように、今後、基本のポイントを発信していきたいと思っています。
………
- ちなみに最近、読影室(ラジエーションハウス、と言っているのは聞いたことがない 笑)であった会話です。
読影室には、画像の解釈について、よく他の科の医師がコンサルテーション(相談)にやってきます。
バリバリ活躍中の中堅消化器内科医「(CT画像を一緒に見ながら)この患者さん、腹痛なんですけど、、、膵炎はないですよね?」
放射線診断医「・・・いや、膵炎は、ありますね(苦笑)」
・・・
消化器外科医「腹痛、嘔吐なんですけど、大丈夫そうですかね?」
放射線診断医「いや、軽微な所見ですが、ここで腸管が破れてるんで、これからオペですかね。(画像を示す)」
消化器外科医「うわ、ほんとですね!」
・・・
ベテラン消化器内科医「エコー(超音波の画像検査)してみて胆嚢炎だと思ったんですが、CTでも胆嚢炎で合ってますよね?」
放射線診断医「うーん、その可能性はもちろんあるんですけれど、おそらく胆嚢の隣にある肝臓に膿瘍(感染している病変)があって、炎症が胆嚢にも波及しているように見えます。」
消化器内科医「そうなんですか。。。では、いったん胆嚢摘出手術は中止して、抗生剤で様子を見てみます。必要そうならまた ドレナージ (管を入れて膿瘍を体外に排出させる )の相談させてください」
・・・こんなかんじで仕事しています。ちゃんとした急性期病院に勤めていても、こんなのアルアルです。せっかく撮影したんだから、やっぱりもうちょっとだけCT読めるようになって欲しい。真夜中だったら1人で判断しないといけないわけだし。お節介を続けていきます。