ラジハ6話 IVRなど
医師法17条
医師でなければ医業を行ってはならない
と書かれています。すべての他の医療系の職業は、上の法律の例外として、という立ち位置なのです。いうて形だけね。
この法律が医師を特別な存在にしている反面、医師の首も締めています。医師がいないと医療行為ができないので、みんな働かないといけない。
最近では診療の手伝い、というかほぼ診療行為をしている看護師さんもいますね。
正直助かります。
IVR(interventional radiology、インターベンション、画像下治療)
放射線科医だけでなく、むしろ、循環器内科や脳外科のイメージでしょうか?
IVRは
・vascular(血管系)
・non-vascular(それ以外)
に大別されます。
vascularの中で、
・循環器内科は冠動脈(心臓を栄養する動脈)
・脳外科は脳動脈
を主に専門分野としています。
では、放射線科はどの分野かというと・・、
・心臓と脳以外の血管
を担当しています。いちばん多いのは腹部の血管で、肝細胞癌(肝臓癌)のカテーテル治療がいちばん多い手技でした。「でした」と書きましたが、まだ多いのかな?そろそろ少なくなってきます。肝臓癌の原因となる肝炎ウイルスの新規感染が減り、また治療法がよくなっているため、肝臓癌自体が減っています。ちなみにTACE(肝動脈化学塞栓療法)というカテーテル治療です。
他にも
・non-vascularでは、膿瘍ドレナージや画像ガイドでの生検、他にも腎細胞癌の凍結治療(冷やしてやっつける)など様々です。
画像ガイドのもとで行うもので、
X線、CT、MRIなどがありますが、MRIは金属が使えないためあんまり用いません。
なんにせよ、かなり専門性が高いため、カテーテル手術をしている隣で、専門でない医師が見ていても、いまなにをしているのかも分からない人もいる・・・そんな治療です。
「いまどのへんですか?」ってよく聞かれます(笑)
IVRの良い点、悪い点
・良い点は、低侵襲(ダメージが少ない)であることです。
身体を切り開かずに、針を刺す程度の傷で行うため、痛みも少ないです。
だいたい全身麻酔は必要ないです。
身体の中を見通す画像検査を行って、その画面を見ながら、針やワイヤーやカテーテル(ストローのようなもの)を用いて治療していきます。
お腹の中で出血した場合、開腹してもどこから血が出ているのか分からないこともあります。そのためにCTで出血点を同定するわけですが。
IVRのほうが早く出血点にたどり着けることもあれば、
今回のような脾臓の損傷で、摘出するとなれば、緊急手術のほうが早いかもしれません。出血のレベルによっては早さがいちばん大切ですからね。
ただ、子供の脾臓は摘出しなくて済むなら摘出したくありませんね。脾臓は免疫に関わっていますので。
・困った点は、
X線やCTでは被曝するという点です。術者である医師やサポートする技師も被曝してしまいます。しかもまあまあ時間がかかるので、なかなかに被曝環境に居ることになります。しかしながら、しっかり気をつけていれば、かなり少ない被曝量で済みます。術者は鉛のガラスで被曝を防ぎながら、鉛のメガネをして、鉛のジャケットを着ます。
造影剤を使用する。
血管系のIVRでは造影剤の使用は必須と言っていいでしょう。
なんでかって?
X線を用いても、人間の身体の中の構造は見えないんです!!
血管がどこにあるかなんでわかりません。
そこで、血管の中に造影剤を流して、造影剤を見る!ことで、血管の形を写し出します。でも一瞬で造影剤は流れ去るので、全体像の把握は困難なこともあり、術前にCTなどの画像から、血管の形を把握しておくことが重要です。
血管の形はほんとうに人それぞれで、「え!?なんでそこからその血管生えてるの!?」なんてこともあります。
なので前もって血管の地図を、その人それぞれに合わせて覚えて臨んでいます。
こんなかんじで、書いて覚えていることもあります。
カテーテルの種類
ドラマで、「コブラ?」「シェファードフックよ」みたいな会話がありましたが、
ストローのようなものであるカテーテルの先端の形には様々な種類があります。血管は人によって色んな形をしているので、そのためにカテーテルもいろいろな形のものが用意されています。
血管の形を把握して、形にあうカテーテルを選択するには経験が必要です。
汚いですけど(笑)
左から RC1 シェファードフック コブラ
などあります。